親族内承継のパターン
現オーナー経営者の子息・子女が後継者となるケースが典型的です(事業承継全体の約4割、親族内承継全体の約2/3を占める)。
その他にも、オーナー経営者の甥や娘婿、配偶者が後継者となるケースなどがあります。
その他にも、オーナー経営者の甥や娘婿、配偶者が後継者となるケースなどがあります。
関係者の理解が必要です
1.後継者候補が複数いる場合は、意思疎通を行い、なるべく早期に後継者を決定することが重要。2.社内や取引先・金融機関に対して、事業承継計画の公表を行っておくことが有効。
3.将来の役員陣の構成を視野に入れて、役員・従業員の世代交代を準備。
後継者の教育
経営に必要な能力・知識を習得するために、社内・社外での教育を実施。
社内での教育(経営者による直接指導が可能) |
自社の各分野(営業・財務・労務など)のローテーション |
経営幹部等責任ある地位に就けて権限を委譲 |
社外での教育 |
他社勤務を通じて、幅広い人脈の形成や経営手法を習得 |
中小企業関係団体、金融機関、中小企業大学校等のセミナーへの参加 |
株式・財産等の分配(総論)
l 株式、財産等の分配においては、 1.後継者への株式等事業用資産の集中、2.後継者以外の相続人への配慮、という2つの観点からの検討が必要。
l 現時点で既に株式が分散している場合には、可能な限り買取り等を実施すること。
後継者への株式等事業用資産の集中 |
後継者及びその友好的な株主への、株式の相当数(目安としては、株主総会で重要事項を決議するために必要な2/3以上の議決権)の集中が望ましい。 |
企業価値向上に貢献した後継者への経済的配慮は、個人間の贈与等でなく、遺留分問題が生じないよう、会社から報酬を与えるのが有効。 |
後継者の相続税負担が大きくなり得るため、専門家と相談して対策を立て実行すること。 |
後継者以外の相続人への配慮 |
生前贈与や遺言を用いる場合でも、他の相続人の遺留分(※)による制限があるので注意。 |
後継者への生前贈与
l 生前贈与は、後継者への財産移転の方法のうち、権利が確定されるため最も確実。
l 遺留分等民法上の問題については、十分注意することが必要。
l 税務面では、暦年課税制度と相続時精算課税制度による税負担を比較し、どちらの制度が有利であるかを判断する。
遺留分の問題 |
生前贈与で分け与えた財産については、他の相続人の遺留分による制約を受けるため、財産分配方針を決定した上で計画的に行うことが必要。 |
暦年課税制度 |
歴年毎にその年中に贈与された価額の合計に対して贈与税を課税。110万円の基礎控除があるが、税率は10%~50%の累進税率。 |
相続時精算課税制度 |
将来相続関係に入る親から子への贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する制度。2,500万円の特別控除があり、それを超えた額については一律20%の税率を適用。 |
遺言の活用
l 遺言を作成することで、後継者に株式等事業用資産を集中することが可能。ただし、遺言はいつでも撤回できるため生前贈与ほど後継者の権利が確実でないことに加え、遺留分の問題や遺言の有効性をめぐるトラブルが起こることもある。
l 各種遺言の中でも、公正証書遺言が自筆証書遺言に比べて有効。
l 確実に遺言内容が実行されるという観点では、遺言信託の活用も選択肢の一つ。
自筆証書遺言 |
遺言作成者が全文を自筆で作成。手間や費用はかからないが、形式不備での無効や、偽造・紛失のおそれがある。 |
公正証書遺 |
公証人という専門家や2名の証人が作成に関与する遺言。手間やコストがかかるが、無効となる可能性が低く、信頼性が高い。 |
会社法の活用
l これ以上株式を分散させないために、譲渡制限規定を置くことが必要。
l 「会社法」で活用の幅が拡大されている議決権制限株式、拒否権付種類株式(黄金株)、相続人に対する売渡請求等の活用も有効。
議決権制限株式 |
株主総会での議決権が制限されている株式。後継者には議決権のある株式を、後継者以外の相続人には議決権制限株式を与えることで、後継者に経営権を集中することが可能。 |
拒否権付種類株式 |
特定の決議事項について拒否権を有する株式。オーナー経営者が重要事項についてのみ拒否権を有する株式を保持することで、後継者の独断専行経営を行うといった事態を防ぐことが可能。 |
相続人に対する売渡請求 |
相続によって株式を取得した者に対して、会社が株式の売渡請求を行うことができる制度。 |
※経営承継円滑化法「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の活用
中小企業の事業承継を円滑に運ぶための、法による優遇措置。2009年に制定されました。
同法には、税制面から、民法の特例の面から、金融支援の面からの3種類の支援があります。
同法には、税制面から、民法の特例の面から、金融支援の面からの3種類の支援があります。
1.税制面からの措置としては、非上場の株式にかかわる相続税および贈与税の納税が猶予される。後継者へ株式を相続または贈与する際の税負担が大幅に軽減される。地域経済と雇用を支える中小企業が事業活動を継続させることを目的としている。
2.民法の特例は、後継者が贈与を受ける非上場株式が、相続時に被後継者から遺留分減殺請求の対象外となるように、生前贈与株式を遺留分の対象から除外、もしくは生前贈与株式の評価額を予め固定できるという措置
3.金融支援の面では、経済産業大臣の認定を受けた中小企業者が経営者の死亡等に伴い資金が必要となった場合に、中小企業信用保険法の特例等により資金調達を支援する。必要な資金の例としては、親族外承資金、株式、事業用資産の取得資金、信用力低下時の運転資金、相続税負担など。
3.金融支援の面では、経済産業大臣の認定を受けた中小企業者が経営者の死亡等に伴い資金が必要となった場合に、中小企業信用保険法の特例等により資金調達を支援する。必要な資金の例としては、親族外承資金、株式、事業用資産の取得資金、信用力低下時の運転資金、相続税負担など。
利用するためには、「合意書の締結」「経済産業大臣の確認申請」「家庭裁判所の許可の申立て」等が必要となります。